静かな時間で思い出を巡る。過去のわたしが教えてくれること
一人時間、ふと手持ち無沙汰になったとき
一人で静かに過ごす時間は、本来、自分自身を労り、内面を豊かにするための大切な機会です。しかし、「さて、何をしようか?」と思ったときに、特にやりたいことも見つからず、気づけばスマートフォンを眺めているだけで時間が過ぎてしまった、という経験がある方もいらっしゃるかもしれません。何をすれば良いか分からず、ちょっぴり孤独を感じてしまうこともあるかもしれませんね。
新しい趣味を見つけたい気持ちはあるけれど、一歩を踏み出すのが億劫に感じられるとき。そんなときにおすすめしたい、特別な準備も必要なく、誰にでもすぐに始められる静かな時間の過ごし方があります。それは、「過去の思い出を巡る」時間です。
単に懐かしい気持ちに浸るだけでなく、この時間は今の自分を理解し、未来へ繋がる温かいヒントを見つけるための宝物のような時間になります。
なぜ、一人で「思い出を巡る」のが良いのでしょう?
思い出を振り返ることは、過去の出来事や感情に触れることです。なぜ、それが一人時間を豊かにすることに繋がるのでしょうか。
それは、思い出の中に「過去のわたし」がいるからです。
- 自己肯定感を育む時間: 楽しかった経験、何かを乗り越えた経験、一生懸命頑張った記憶に触れることで、当時の自分を肯定的に捉え直すことができます。「あの時、こんなに頑張れたんだ」「こんな些細なことでも幸せを感じていたんだ」と気づくことは、今の自分を認め、労うことに繋がります。
- 忘れていた「好き」を再発見: 子供の頃夢中になったこと、学生時代に熱中した趣味、かつて興味を持っていたけれど忘れてしまったこと。思い出の中には、今のあなたが忘れてしまっている「好き」のヒントが隠されていることがあります。それは、新しい一人時間の過ごし方を見つけるきっかけになるかもしれません。
- 自分自身の成長を実感: 当時は大変だったこと、悩んでいたことが、時間が経つと乗り越えた経験として今の自分を作っていることに気づかされます。自分の成長や変化を実感することは、未来へ向かう勇気になります。
- 内面の整理: 楽しかったことだけでなく、少し感傷的になったり、反省したりすることもあるかもしれません。しかし、一人静かにそれらの感情と向き合う時間は、心の整理に繋がります。誰かに話すわけではなく、自分自身の中で消化することで、内面が整っていくのを感じられるでしょう。
思い出を巡る時間は、外の世界に何かを求めるのではなく、自分の内側に深く潜っていく静かな探求の時間なのです。
どうやって「思い出を巡る」時間を始める?
特別な準備は何もいりません。必要なのは、過去に触れることができる何か、そして少しの静かな時間だけです。
手元にあるもので、すぐに始められます。
- 写真やアルバム: 一番手軽なのは、写真を見ることかもしれません。プリントされたアルバムを開くのも良いですし、スマートフォンのカメラロールを遡ってみるのも良いでしょう。
- 手紙や日記: 昔やり取りした手紙、交換日記、自分で書いていた日記帳。当時の率直な気持ちがそのまま残されています。
- 古い持ち物: 学生時代の教科書、かつて集めていたもの、誰かからもらった大切な品。一つ一つに物語があります。
- SNSの過去の投稿: TwitterやInstagramなどの過去の投稿を振り返ってみることも、デジタルならではの「思い出巡り」です。
まずは、「何か一つ」手にとってみましょう。そして、ほんの短い時間、例えば5分でも10分でも良いので、その「何か」を眺めたり、読んだりしてみてください。
場所は、自宅のリビングのソファ、ベッドの上、お気に入りの椅子など、あなたが一番リラックスできる静かな場所が良いでしょう。スマートフォンの通知はオフにするか、見ても思い出に関連するアプリ以外は開かないように意識すると、より集中できます。
思い出から温かいヒントを受け取るには?
ただ単に思い出を眺めるだけでも心地よい時間ですが、そこから今の自分へのヒントを受け取るためには、少しだけ意識を向けてみることがおすすめです。
- その時、何を感じていましたか? 写真や手紙を見ながら、当時の天気、匂い、周りの音、そして何よりも「自分自身がその時、どんな気持ちだったか」を思い出してみましょう。楽しかった、嬉しかった、悔しかった、緊張した。感情に焦点を当てることで、より鮮やかに思い出が蘇ります。
- 写っている「過去の自分」に声をかけてみましょう。 アルバムの中の、幼かったり、頑張っていたりする自分自身に、「よく頑張ったね」「大丈夫だよ」「あの時のそれ、すごく素敵だよ」と心の中で言葉をかけてみてください。自分自身を労う、温かい時間になります。
- 「好き」の種はありますか? 熱中していた趣味、行って楽しかった場所、繰り返し読んでいた本。その中に、今のあなたが再び興味を持てるものはありますか?それが、新しい一人時間の過ごし方のヒントになるかもしれません。
- 失敗や困難から、何を学びましたか? 辛かった思い出も、今のあなたがそれを乗り越えているなら、それは大きな財産です。当時の大変さだけでなく、「そこから何を学び、どう変わったか」に目を向けてみましょう。今の自分を作っている大切な経験だと気づくはずです。
最初から深掘りしようと気負う必要はありません。まずはパラパラと写真を見るだけでも、日記の最初の数ページを読むだけでも十分です。慣れてきたら、少し時間をかけて、心に引っかかった思い出についてじっくり考えてみる時間を取ってみましょう。
思い出巡りの時間から見つけたこと(体験談より)
「一人で過ごす時間が増えて、なんとなくスマホを眺めてしまうことが多かったんです。新しい趣味もなかなか始められなくて。でも、ある時ふと実家から持ってきた古いアルバムを開いてみたんです。子供の頃の写真を見て、当時どれだけ絵を描くのが好きだったかを思い出して。しばらく描いていなかったけれど、もう一度描いてみようかな、という気持ちになれました。上手に描けるかは分からなくても、ただ『好き』だった気持ちを思い出しただけで、心が温かくなりました。」
「高校時代の日記を読み返してみたんです。当時は本当に些細なことで悩んだり喜んだりしていて、『ああ、自分ってこんなことで一喜一憂してたんだな』って少し恥ずかしくもなりました。でも、その時の真剣な気持ちとか、友達との関係とか、今の自分では忘れてしまっていた大切な感情に気づくことができました。そして、あの頃悩んでいたことが、今の私から見ればたいしたことないと思えるくらい、自分は成長したんだ、と思えて、少し自信が持てた気がします。」
「スマートフォンのカメラロールを数年分遡ってみたんです。旅行やイベントの特別な写真だけじゃなくて、自分で撮った空の写真とか、道端で見つけた花の写真とか、何でもない日常の記録がたくさん出てきて。その時『綺麗だな』とか『面白いな』と感じて写真を撮っていた、過去の自分の視点に気づかされました。忙しい毎日に見落としがちな、日常の中の小さなきらめきを、過去の私が教えてくれたような気持ちです。それ以来、少し意識して日常の中の美しいもの、面白いものを見つけるようになりました。」
これらの体験談のように、思い出を巡る時間は、過去の自分から今の自分へのメッセージを受け取るような、温かく内省的な時間になります。
静かな時間で、過去のわたしと心を通わせる
一人でいると孤独を感じやすい、という方も、思い出を巡る時間では、常に「過去の自分」という、あなた自身がそこにいます。そして、写真の中にいる友人や家族の笑顔を見れば、物理的に一人でいても、大切な人たちとの繋がりを改めて感じることができます。
過去は変えることができません。でも、過去に対する「まなざし」を変えることはできます。楽しかった思い出を大切に味わい、困難な思い出からは学びを見つけ出す。そうすることで、過去の経験全てが、今のあなたを形作るかけがえのないものだったと肯定的に捉えられるようになります。
一人時間で何をしようかと迷ったときには、ぜひ手元にある「過去に触れるもの」に手を伸ばしてみてください。ほんの短い時間でも、過去のわたしと心を通わせることで、今の自分が少し軽やかになり、温かい気持ちに満たされるのを感じられるはずです。
特別なことではなく、誰にでもできる静かな時間の過ごし方です。ぜひ、あなたのペースで試してみてください。